人形に命を吹き込む頭師。
培った感覚を頼りに全神経を集中させ小刀で彫る開眼作業は、僧侶が仏像に目を描き込んで魂を宿す開眼と通じるまさしく人形に命を宿す瞬間です。
京都に息づく伝統美のなかでも、ひときわの美しさを誇る京人形。京人形の上品で端整な面差し、穏やかな表情は、京都の雅さの象徴です。
京人形の特徴とする控えめで気品のある頭づくりの追及。
それは、これまで培ってきた人形づくりの技法を大切にしながら、試行錯誤と挑戦の繰り返しです。頭も受け継がれてきた型を元にしながら変えていく。もしかすると、完成形はないのかもしれません。何故なら、決して伝統文化が歩みを止めることはないからです。
先代たちも、慢心することなくそうして試行錯誤を繰り返して型を追及してきたことでしょう。
そうしてつくられた猪山の顔は、過去のもののようであっても実は今の京の顔とも呼べるのかもしれません。